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東京地方裁判所 平成5年(特わ)1802号 判決 1994年4月26日

本店所在地

東京都港区芝三丁目二番一一号

株式会社

カノア

(右代表者代表取締役 加瀨光延)

本籍

東京都世田谷区弦巻五丁目一四番

住居

同区新町三丁目八番五号 エレガンス・ツカサ一〇二

会社役員

加瀨光延

昭和一二年一一月二九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官金澤勝幸、弁護人吉野正紘各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社カノアを罰金四〇〇〇万円に、被告人加瀨光延を懲役一年六月に処する。

被告人加瀬光延に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社カノア(平成二年一月三〇日以前の商号は「株式会社加瀨商会」、以下「被告会社」という)は、東京都港区芝三丁目二番一一号に本店を置き、日用品雑貨の販売等を目的とする資本金一〇〇万円の株式会社であり、被告人加瀨光延(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六二年一〇月一日から昭和六三年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六五五六万四二八六円(別紙1修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、昭和六三年一一月三〇日、東京都港区芝五丁目八番一号所轄芝税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が二八万四〇四三円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二六五七万六八〇〇円(別紙4ほ脱税額計算書(1)参照)を免れ

第二  昭和六三年一〇月一日から平成元年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億四五六六万一六〇五円(別紙2修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成元年一一月二九日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三七四万〇五九八円で、これに対する法人税額が一一二万二〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇二二一万七六〇〇円と右申告税額との差額一億〇一〇九万五六〇〇円(別紙4ほ脱税額計算書(2)参照)を免れ

第三  平成元年一〇月一日から平成二年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一五四三万一九一八円(別紙3修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年一一月三〇日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一二七八万六〇五三円で、これに対する法人税額が四二三万四四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四五二九万二四〇〇円と右申告税額との差額四一〇五万八〇〇〇円(別紙4ほ脱税額計算書(3)参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書一〇通

一  手島良雄(二通)及び角田登志男の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、受取手数料調査書、仕入高調査書、給料手当調査書、通信費調査書、交際費調査書、水道光熱費調査書、消耗品費調査書、支払手数料調査書、家賃調査書、雑費調査書、小屋開設費調査書、みかじめ料調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費損金不算入額調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書

一  登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿謄本(二通)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の申告欠損金調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書(通信費に関するもの)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成五年押第一四四〇号の1)

判示第二及び第三の各事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書二通(雑収入及び事業税認定損に関するもの)

判示第二の事実について

一  都築旭輝の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の欠損金当期控除額調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書(支払手数料に関するもの)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の租税公課調査書、保険料調査書、雑損失調査書及び固定資産除却損調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社について 判示各事実について、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項(罰金刑の寡額については、いずれも刑法六条、一〇条により平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)

2  被告人について 判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項(罰金刑の寡額については、前同)

二  刑種の選択

被告人について いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社について 刑法四五条前段、四八条二項(各罪の罰金額を合算)

2  被告人について 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人について 刑法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金五〇〇〇万円、被告人・懲役一年六月)

(裁判官 中里智美)

別紙1 修正損益計算書

<省略>

別紙2 修正損益計算書

<省略>

別紙3 修正損益計算書

<省略>

別紙4 ほ脱税額計算書

株式会社 カノア

(1)自 昭和62年10月1日

至 昭和63年9月30日

<省略>

(2)自 昭和63年10月1日

至 平成元年9月30日

<省略>

(3)自 平成元年10月1日

至 平成2年9月30日

<省略>

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